【後編】口に入れた瞬間、すっと消えていく。ササニシキという米が教えてくれたこと
前編ではササニシキ米の歴史と美しさを、中編では石巻の農家様と職人がかける手間についてお話ししました。最終回となる後編では、実際にこの米と向き合い続けてきた六代目として、その味わいと、島津麹店の商品への想いをお伝えします。
後味が、すっと消えていく米
ササニシキ最大の特徴は、その後味の軽さにあります。粘り気の強いお米が主流になった今の食卓において、ササニシキはあえて主張しすぎない、あっさりとした食味を持っています。
これは、ササニシキがアミロースという成分を比較的多く含む品種であることに由来すると言われています。もちもちとした粘りの少ない、すっきりとした後味。だからこそ、他の食材の味を邪魔することなく、むしろ引き立ててくれる「名脇役」になってくれるのです。
寿司職人がこの品種を好んで選ぶのも、酢を合わせてもべたつかず、ネタの味を引き立てるからだと言われています。島津麹店が糀という発酵の主役をつくる上で、原料となる米には、あくまで名脇役であってほしい。この考え方と、ササニシキの持つ性質は、驚くほど重なっています。
冷めても美味しい、という強み
ササニシキは、冷めてもおいしいお米としても知られています。特に冷たいおにぎりにしたときの美味しさは、他の品種と比べても際立っていると、私自身、日々感じています。粘りが少ないからこそ、粒がだれず、冷めてもすっと歯切れよくいただけるのです。
お米アレルギーとの相性
ササニシキ米は、比較的お米アレルギーが出にくい品種と言われています。これは、粘りの少ないうるち米に多いアミロースというでんぷんの構造が関係していると考えられているためです。医学的に確立された効能ではありませんが、実際に「ササニシキ米なら食べやすい」というお声を、私たちも度々いただいてきました。安心して手に取っていただける理由のひとつとして、そっとお伝えしておきたいと思います。
蒸し上がりの香りに、いつも救われる
セイロから立ちのぼる、蒸し上がったばかりのササニシキの香り。これは、何年この仕事を続けても、いつも心を整えてくれる瞬間です。華やかすぎず、けれど確かに存在感のある、お米そのものの香り。この香りがあるからこそ、私たちは「今日も良い糀ができる」と、静かに確信することができます。
甘みを守る、14度という温度
仕込む前のお米は、常に冷蔵14度で管理しています。これは、お米の甘みを最大限に引き出すための温度帯です。小さな温度管理の積み重ねが、最終的な糀の味わいを大きく左右します。
100%、ササニシキ米を選び続ける理由
島津麹店は、ササニシキが世に出て以来、代々このお米だけを使い続けてきました。
栽培が難しく、収穫量も少なく、決して効率の良い選択ではありません。
それでも私たちがこの米を選び続けているのは、香りも、味も、後味も、これ以上のお米に出会えていないからです。
華糀も、生糀も、糀蔵 -育てる味噌- も、そのすべての奥に、この石巻のササニシキ米があります。一粒の米が、時間をかけて糀になり、やがて誰かの食卓を、そして心をやさしくする。私たちはこれからも、この静かな連鎖を、大切に守り続けていきます。
宮城県産ササニシキ米が、島津麹店の生糀をつくる
前編・中編・後編の3回を通してお伝えしてきたのは、たった一つのお米の物語です。1963年に宮城県で生まれ、栽培の難しさから希少になりながらも、石巻の農家様と職人の手によって守られ続けてきたササニシキ米。
そのお米が、島津麹店の華糀、生糀、味噌 として、みなさまの食卓へと届けられています。原料からこだわり抜いた糀の味わいを、ぜひ一度、ご自身の舌でお確かめください。
島津麹店 六代目