できたてのおいしさを、そのまま食卓へ届けたいからです。
「発酵食品なのに、なぜ冷凍なんですか?」
イベントや工場見学で、お客様から最も多くいただく質問のひとつです。
確かに、発酵食品は冷蔵や常温で販売されているものも多くあります。
それでも島津麹店は、華糀を冷凍でお届けしています。
それは、流行だからでも、配送の都合でもありません。
私たちがつくった一番おいしい瞬間を、そのままお客様へ届けたい。
その想いから、この方法を選びました。
毎日、糀と向き合う仕事
朝、発酵機の扉を開けると、ほんのり甘くやさしい香りが広がります。
気温や湿度、糀の表情は毎日少しずつ違います。
同じ原料、同じ工程でも、その日の気候によって育ち方は変わります。
だから私は、温度計の数字だけを見るのではなく、香りや色、手で触れた感触まで確かめながら仕込みをしています。
糀づくりは、機械だけでは完成しません。
長年受け継がれてきた経験と、毎日糀と向き合う時間があってこそ、おいしい糀が育つ。
忘れられない出来事があります。
六代目になって間もない頃、生甘酒を仕込んでいた日のことです。
発酵温度の設定を、わずか2℃低くしてしまいました。
「ラスト2時間、甘みも十分ある。2℃くらいなら大きな違いはないだろう。」
そう思っていたわけではありませんが、その小さな違いが、仕上がりに大きく影響しました。
出来上がった生甘酒は、いつもより糀の粒が硬く、私が目指していたなめらかな口当たりにはなりませんでした。
そのとき改めて実感したのです。
発酵は、とても繊細な世界だということ。
麹菌は目には見えませんが、温度や時間、環境のわずかな違いにも反応します。
だからこそ、島津麹店では数字だけに頼らず、香りや表情、手で触れた感触まで確かめながら仕込みを行っています。
この経験は、今でも私のものづくりの原点です。
「これくらいなら大丈夫。」
その油断を持たず、一つひとつの工程を丁寧に積み重ねること。
その積み重ねが、今日の華糀や生甘酒の品質につながっています。
糀は生きています。
仕込みが終わっても、時間とともにゆっくり変化を続けています。
香りも、甘みも、麹菌が生み出す酵素の働きも、少しずつ変わっていきます。
もちろん、その変化も発酵の魅力です。
しかし私たちは、お客様にまず味わっていただきたいのは、蔵で仕上がったばかりの風味です。
「この状態で届けられたら。」
その答えが、冷凍でした。
「冷凍すると品質が落ちませんか?」
そう聞かれることがあります。
ですが、私たちにとって冷凍は品質を落とすためではなく、品質を守るための方法です。
高温で加熱して保存性を高める方法もあります。
しかし、それでは香りや風味が変わってしまうことがあります。
島津麹店は、できるだけ自然な状態のまま届けたいと考えています。
そのため、できあがった華糀をすぐに冷凍し、おいしい時間を閉じ込めています。
これは、私たちが大切にしている品質へのこだわりです。
華糀は、ただの調味料ではありません。
麹菌が育み、職人が見守り、時間をかけて完成した発酵の恵みです。
だからこそ、できたての風味をできる限りそのまま届けたい。
その答えが、「冷凍でお届けする」という選択でした。
島津麹店はこれからも、毎日の食卓に寄り添う、本当においしい糀をお届けしていきます。